高速バスでの乗り物酔い対策&万が一のときの処理方法を解説
高速バスは移動時間が長いため、バス酔いしてしまうお客様も少なくありません。
乗り物が苦手なお客様は、酔い止めを服用するなど何らかの対策を行っているケースが多いですが、バス運営会社側も乗り物酔いに対する知識を持ち、適切な対応を取れるようにしておくのが理想です。
今回は、乗客に教えられる高速バスの乗り物酔い対策と、万が一のときの処理方法についてくわしく解説します。
乗り物酔いのメカニズムを知ろう
高速バスの乗り物酔い対策をチェックする前に、まず乗り物酔いが起こるメカニズムを知っておきましょう。
私たち人間は、目から入ってくる情報や、内耳にある三半規管と耳石器がとらえた情報を脳に伝達することで体のバランスを保っています。
しかし、前後左右上下の動きがひんぱんに起こる乗り物では、脳に伝わる情報が過剰になり、脳に大きな負担がかかるほか、目と耳から入ってくる情報にズレが生じます。
脳が情報をスムーズに処理しきれなくなると、心臓や血管といった循環器や、胃腸などの消化器をコントロールしている自律神経が乱れ、胃部不快感や冷や汗、吐き気、嘔吐といった乗り物酔いの症状を招きます。こうした平衡感覚の乱れに加え、においや気温などの不快要素が加わると、さらに乗り物酔いが助長されやすくなります。
バスでの乗り物酔いを防ぐには、目・耳・鼻などに悪影響を及ぼす要素を取り除く対策を行うのがポイントです。
高速バスでの乗り物酔い対策6つのポイント
高速バスに酔わないための対策はいくつかありますが、ここでは乗客へのアドバイスとして、乗車前や走行中に実践できる乗り物酔い対策のポイントを6つご紹介します。
1. 体を締め付ける服装は避ける
ネクタイやベルト、きつめの下着など、体を強く締めつけるような服装をすると圧迫感や息苦しさが増し、乗り物酔いを助長します。
下着を緩めるのは難しいかもしれませんが、ネクタイを外す、ベルトを緩めるなど、できる範囲で体の締め付けを解消すると、乗り物酔い対策になります。
2. あめやガムを食べる
口腔内で唾液を分泌させると、乗り物酔いの原因となる三半規管の不調を整えることができます。
唾液は食事のときなどに分泌されますが、バス内で飲食すると胃に負担をかけたり、においが充満したりしてバス酔いを助長する原因になりますので、あめやガムなどを食べて唾液の分泌を促すのがおすすめです。
バス側であめやガム、タブレットなどを用意しておいて、気分が悪くなった乗客に配ると乗り物酔いの防止に役立ちます。
3. 遠くの景色を見る
自分から距離が近い景色はバスの振動によって前後左右に動きやすく、平衡感覚が狂う原因になります。
逆に、遠くの景色は多少の揺れでブレたり、動いたりしないので、バスに乗っている間はできるだけ遠くの景色を見るようアドバイスすると、乗り物酔いの防止になります。
4. 眠る
寝ている間は乗り物酔いしませんので、バスで移動中はなるべく眠ることをおすすめします。
バス酔いしたあとは、気分が悪くて眠りづらくなるので、乗り物に弱い方には、あらかじめ早い段階で眠るようアドバイスするとよいかもしれません。
もし眠れなくても、目を閉じて安静にしていると、起きているときよりも酔いにくくなります。
シートを起こしたまま眠ろうとすると、頭がぐらぐら揺れて乗り物酔いを助長する可能性がありますので、シートのリクライニングを倒し、なるべく頭が揺れない状態で休みましょう。
5. SAに停まったら、外の空気を吸いに出る
高速バスの場合、途中で何度かSA(サービスエリア)に寄って休憩を取ります。
バス酔いして気分が悪くなると、つい体を動かすのがおっくうになりますが、一度バスから降りて外の空気を吸うと、身も心もリラックスできます。
なお、空腹だと乗り物酔いしやすくなるので、可能であれば軽食を取ることをおすすめしましょう。
ただし、満腹になるほど食べると胃に負担がかかり、バス酔いの原因になるので要注意です。
6. 乗り物酔いに効くツボを押す
手のひら側の手首の付け根から、ひじに向かって指3本分移動した場所に、乗り物酔いに効く「内関(ないかん)」というツボがあります。
この部分を親指で押して刺激すると、乗り物酔いや頭痛の軽減に役立ちます。
身動きやスマホはNG!バスで酔いやすくなる行動
乗り物酔いを防止するために、乗車時に避けたい行動を2つご紹介します。
1. 頭をきょろきょろ動かす
高速バスで移動中、隣に座った同行者と話したり、バスの外の景色を見たりする際、必要以上に頭をきょろきょろ動かすと、乗り物酔いしやすくなります。
とくにバスの進行方向とは逆の方向に頭を向けていると、加速する方向と視線にズレが生じてバス酔いを助長します。
乗客には、バス乗車中はなるべく視線を進行方向に固定し、あちこち頭や視線を動かさないよう伝えておくとよいでしょう。
2. スマホや読書は避ける
スマホや読書に夢中になっているときは、体が揺れで動いているのに、視線は動かないという状態です。目から入ってくる情報と、耳から入ってくる情報にズレが生じると、平衡感覚が狂って乗り物酔いの原因となります。
また、スマホや読書は目にも負担がかかり、頭痛などを引き起こす要因になりますので、バスに乗っている間のスマホ、読書は極力控えるようアドバイスしましょう。
バスで乗客が嘔吐してしまったときの対処法
高速バスで走行中、乗り物酔いをした乗客が嘔吐してしまった場合、すみやかに対処しないと、臭いなどの影響で他の乗客までバス酔いしてしまう可能性があります。
また、適切に処置しないと、あらためて清掃する際に手間ひまかかってしまいますので、正しい対処法を覚えておきましょう。
ここではバスで乗客が嘔吐してしまったときの対処のポイントを3つご紹介します。
1. 嘔吐物にタオルや雑巾をかける
床や座席に嘔吐してしまった場合、臭いや汚れの拡散を防ぐために、上からタオルや雑巾をかけます。
高速道路走行中は、バスの運転手自らが動くことはできませんので、できれば他の乗客の手助けを借りるのが理想です。
難しければ、あわてずに最寄りのSAまでバスを走らせ、停車してから対処します。
2. 嘔吐物処理キットを使用する
嘔吐物処理キットとは、嘔吐物を適切かつスピーディに処理するためのアイテムをひとまとめにしたキットのことです。
処理する人が着用するマスクやグローブ、靴カバー、ビニールエプロンのほか、嘔吐物を固めて処理しやすくする嘔吐物凝固剤や、現場を除菌・消臭するための消毒剤などが同梱されており、短時間で適切に嘔吐物を処理できます。
高速バスは他のバスと異なり、乗客が酔ったからといって簡単に停車できませんので、万一のときに備えて嘔吐物処理キットを車内に常備しておくことをおすすめします。
3. 処理後、ビニールシートなどでカバーする
座席シートに嘔吐してしまった場合、クリーニングしないと汚れや臭いを完全に除去するのは困難です。
床の場合、嘔吐物処理キットを使用すれば汚れや臭いはほぼなくなりますが、心理的な抵抗が強いので、クリーニングするまではビニールシートなどで覆っておきましょう。
乗客が快適に過ごせるよう、バス酔い対策や万一の対処法を覚えておこう
高速バスは走行が長時間に及ぶうえ、SAでしか途中休憩できません。乗り物に弱い方はもちろん、普段は車酔いしない方もバス酔いしてしまう可能性があります。
いざというときに適切なアドバイスをできるよう、正しい乗り物酔い対策の方法を覚えておきましょう。
もし乗客がバスに酔って嘔吐してしまった場合は、適切かつすみやかに対処できるよう、タオルや嘔吐物処理キット、ビニールシートなどを車内に常備しておくと安心です。