白バスは違法?バス購入から事業開始までの正しい流れを紹介
テレビやWeb上などで、白バスという言葉を見聞きしたことがある方は多いのではないでしょうか。白バスとは、白色のナンバープレート(自家用車用のナンバー)を付けて営業行為を行っているバスの総称であり、違法であるため国土交通省でも注意を呼びかけています。
今回は、そのような白バスの違法性や、貸切バス事業を始めるときに必要な許可、バス購入から事業開始までの正しい流れについて解説します。
知らない間に法律違反を犯さないために、これからバス事業を開始する方はぜひ参考にしてください。
白バスは違法?白バスの基礎知識と違法になるケースを解説

白バスとは、白色のナンバーを掲げて営業行為をしているバスの総称です。
普通自動車のナンバーには、白地に緑色の文字が書かれている「白ナンバー」と、緑地に白色の文字が書かれている「緑ナンバー」の2種類があります。
白ナンバーは自家用車に交付されるものです。通勤や買い物、旅行など、自分のために使用する車は自家用車に該当します。
一方の緑ナンバーは事業に用いる車に交付されるものです。ここでいう事業とは主に自動車運送事業のことで、具体的にはタクシー事業やバス事業、トラック事業などがこれに該当します。
つまり、貸切バスや路線バスとして人を運び、その対価を得る自動車運送事業を営む場合、使用するバスには緑ナンバーを付けなければなりません。白バスは、本来なら自家用車を意味する白ナンバーを付けて営業行為を行っているため、道路運送法第4条の規定に反する違法行為と見なされます。
違法になる白バスのケース
道路運送法違反になる白バスの具体的な事例には以下のようなものがあります。
・参加者から参加費を徴収し、マイクロバスを運行
・観客から募金名目で運賃を徴収し、シャトルバスを運行
・旅館・ホテルが保有している送迎用バスを使って宿泊者を観光地に案内
・市町村が保有するバスを住民に貸し出す
「運賃」ではなく、「参加費」や「募金」といった名目であっても、バス運行の対価として金銭を受け取った場合は有償行為と見なされるため、違法となる白バスに該当します。
ただし、3番目や4番目の事例のように、どこからが通常のサービスや行政業務に該当し、どこからが有償運送になるのかの線引きは、場合によって判断が難しいことがありますので注意しましょう。
白バス行為をするリスク
白バス行為をする場合に懸念されるリスクは2つあります。
1つ目は、道路運送法違反に対する罰則です。白バス行為は、国土交通大臣の許可を得なければ一般旅客自動車運送事業を経営してはならないと定める、道路運送法第4条に反する行為であり、同法九十六条の規定の下、三年以下の拘禁刑もしくは三百万円以下の罰金に処し、またはこれを併科される可能性があります。[注1]
2つ目は、事故を起こした場合の補償を受けられない恐れがあることです。任意保険では、白バスのような違法行為によって発生した事故を補償の対象外とすることがほとんどです。任意保険が適用されない場合、損害賠償額の金額を自分で負担しなければならない可能性があります。
莫大な損害を負わないためにも、バスを事業用として利用する場合は、必要な許可や手続きを怠らないことが大切です。
[注1] e-Gov法令検索「道路運送法」
貸切バス事業を始めるときは許可が必要
貸切バス事業は一般旅客自動車運送事業に該当するため、道路運送法第4条の定めに基づき、国土交通大臣から許可を得なければなりません。
許可の申請には、主に以下のような基準を満たしていることが条件となります。
| 項目 | 要件 |
| 営業区域 | 県を単位とする。運送は、発地・着地双方もしくはいずれかが営業区域内でなければならない |
| 営業所 | 営業区域内にあり、運行管理・整備管理等を適切に遂行できる機能を有していること |
| 事業用自動車 | 営業区域ごとに、乗車定員11名以上の自動車が最低3両以上(大型車を使用する場合は最低5両以上) |
| 自動車車庫 | 営業所と併設、もしくは営業所から2km以内にあり、計画車両の全てを適切に収容できること |
| 休憩仮眠または睡眠のための施設 | 営業所あるいは自動車車庫に、運転者等の休憩仮眠等に適した規模・設備の施設を併設すること |
| 管理運営体制 | 安全管理規程を定め、安全統括管理者を選任すること |
| 運転者 | 事業用自動車の数以上の、有資格の運転者を常時選任すること |
| 安全投資計画 | 輸送の安全を確保するために行う投資内容を記載した安全投資計画の作成をすること |
| 事業収支見積書 | 安全投資計画に従って事業を遂行するために十分な経理的基礎を有することを証明する事業収支見積書の作成をすること |
| 資金計画 | 所要資金および事業を始めるために必要となる資金の確保をすること |
| 法令遵守 | 申請者または代表権を有する常勤役員(法人の場合)は、一般貸切旅客自動車運送事業の遂行に必要な法令知識を有していること |
| 保険 | 事業用自動車について、自賠責保険および損害賠償能力を有する任意保険に加入すること |
上記のような基準を満たした上で然るべき申請を行うと、国土交通大臣から一般旅客自動車運送事業の許可が下ります。
バス購入から事業開始までの正しい流れ

白バスにならないための、貸切バス事業開始までの正しい流れを4つのステップに分けて解説します。
許可申請のための準備
一般貸切旅客自動車運送業の許可を得るには、申請のための準備を済ませておく必要があります。具体的な準備は以下の通りです。
・営業環境の整備(営業所や休憩仮眠または睡眠のための施設の整備)
・バスの選定・購入
・各種規定・計画の策定(安全管理規定や安全投資計画、事業収支見積書の作成など)
いずれも、前章で説明した一般貸切旅客自動車運送業の申請に関する審査基準を満たすことが前提条件となります。なお、バスに関しては乗車定員11名以上の自動車を最低3両以上(大型車の場合は最低5両以上)用意しなければなりません。
貸切バスの購入費用は、車両の種類や規模、搭載されている機能などによって異なりますが、まとめて3両以上を仕入れるとなるとかなりの出費になります。
貸切バス事業を開始するには車両だけでなく営業環境の整備も必要になるため、なるべく予算を抑えたいのなら新車にこだわらず、リーズナブルな中古バスの購入も検討してみましょう。
申請書の作成・提出
申請の準備が整ったら、一般貸切旅客自動車運送事業経営許可申請書の作成および添付書類の準備を行います。申請書は運輸支局の窓口にある他、各運輸支局のWebサイトからダウンロードして使用することも可能です。
申請書には氏名または名称、住所、代表者(法人の場合)を記載し、以下の添付書類を添えて、営業区域を管轄する運輸支局に提出します。
・所要資金および事業開始に要する資金の内訳
・自己資金の確保を裏付ける書面
・休憩、仮眠または睡眠のための施設の概要を記載した書面
・事業の用に供する施設の概要および付近の状況を記載した書類
・事業用自動車の運行管理等の体制を記載した書面
・社会保険加入義務者が社会保険等に加入する計画があることを証する書面
・任意保険または共済の見積書等の写し、宣誓書
・定期点検整備実施計画を証する書面(貸切バスが中古車の場合)
上記以外にも、事業者が個人か法人かなどによって必要な書類が異なる場合があります。必ず運輸支局のWebサイトで確認するか、直接問い合わせて必要書類を確認しておきましょう。なお、申請から許可が下りるまでにはおおむね4か月程度の時間がかかります。
事業開始までの手続き
無事に許可が下りたら、従業員の社会保険への加入や、登録免許税の納付、運賃料金設定届および運行管理者、整備管理者選任届の届出など、必要な手続きを進めていきます。
事業開始
全ての手続きや準備を終えたら、事業を開始します。なお、事業を開始したら、30日以内に運輸開始届の届出を行いましょう。
白バスは違法!貸切バス事業を開始するならきちんと許可を取ろう
貸切バス事業は一般旅客自動車運送事業に該当するため、事前に国土交通大臣から許可を得なければなりません。
自家用車に交付される白ナンバー付きのバスで貸切バス事業を営むと、道路運送法違反と見なされて罰則の対象となるので、正しい手順を踏んで必要な許可を取得しましょう。


